http://dot.asahi.com/dot/2015120400014.html
ある朝、髭を剃ろうと鏡を見ると耳からところどころ太い毛が生えている。
耳の穴からも毛が伸びている――。
早い人だと30代、40代から50代の男性なら、“耳毛”に悩む人は決してすくなくはないだろう。
耳の穴からも耳毛が伸びてくる。
かつては理容院に行けば理容師さんがこの耳毛を剃ってくれたというが、どうやら今は様子が違うようだ。
大阪府内で理容室を営む50代男性が語る。
「耳毛剃りは、穴刀(あなとう)という、耳毛剃り専門のカミソリを使うんですわ。
これでお客様の耳孔、つまり耳の穴やね。
そこを傷をつけてしもうたり、酷い場合には鼓膜を破ったりした事故もあったさかい、今ではほとんど 行われることはありませんねん。
大阪と京都の2府では条例で禁止されてますわ。せやさかい、
“鼻毛切り”はOKやけど、“鼻毛剃り”はアウトちゅうわけですわ」
もっとも他県の理容業界でもこの流れを受けて理容業界側が自発的に耳毛剃りを自粛している。
そのため若い理容師の間では、穴刀を用いた耳毛剃りの技術を持つ者は少ない。
お客の耳毛剃りを行った経験があり、みずからも客として耳毛を剃ってもらった経験がある兵庫県内の60代理容師は、その技術の高さと気持ちよさを次のように明かす。
「ショリショリ、ショリショリ……とね、耳掃除とはまた違う気持ちよさ。
一度体験したらもう病みつきになるで!
剃り終えた後、そらもう音がクリアに聞こえるわ。
ただそれは理容師を信頼してこその話。
下手な理容師やとそらごっつう怖いがな……」
条例で耳毛剃りが禁止されていない東京都では、何店舗か耳毛剃りのサービスを前面に出している理容室も存在する。
うちは穴刀を用いて施術します。
でも、せいぜい外から見える範囲です。事故があってもいけないので。
事故ではなくても肌の弱いお客さまだと刃物を当てるだけでも肌荒れしたりもしますから。
音がクリアになる?
それはないと思いますよ(笑)」(東京都内の理容室店主)
一方で、理容室による“耳エステ”が行われている。
だが、これも一部自治体では理容師や美容師による施術が禁止されている。
そのため“耳毛剃りNG”“耳エステOK”というのが理容業界の全国的な流れだ。
なぜ、このような違いがあるのか。
理容師業の集まりである全国理容生活衛生同業組合連合会(全理連)に聞いた。
「刃物を使うからでしょう。刃物を使わない耳エステと違い、耳毛剃りはカミソリを用います。これは経験の積んだ理容師でも高い技術が求められますから」
とはいえ、耳毛が伸びるとことのほか気持ち悪いことこの上ない。
何とか耳の奥深くにある耳毛を剃ってもらう方法はないものか。
耳鼻科医に聞いてみた。
「過去の事故もあり、長年の経験を積んだ理容師さんですら慎重を要する技術です。 ただただ、我慢して頂くしか……耳鼻科医に頼まれても無理です。我慢して下さい」
やはり耳の穴に生えている耳毛はやはり自分で剃るしかないのか。
今では電化量販店でも耳毛を剃る器具も販売されている。
これらを用いて剃るのもひとつの手ではある。
耳毛を剃る器具を取り扱っているメーカー何社かに尋ねてみると、その回答は概ね次のような内容に集約された。
「基本的には耳の周辺、鏡で見えるところだけで使用してください。
耳の穴に入れて――ということは想定しておりません。危ないので絶対に止めて下さい」
引用元: ・【床屋】昔は剃ってくれたのに…理容師が“耳毛”を処理できない「高い壁」
耳の穴に生えている毛を剃ることも出来た理容師の高い技術は、今では「デコルテ」と呼ばれる上半身の体毛を剃る技術などにみられる。
結婚式における花嫁の胸、背中の産毛を剃る技術だ。
「女性の理容師が行うことが多いです。体の見えるところのシェービングは理容師の仕事の範疇なので」(前出の全理連の担当者)
体の見えない部分、耳の穴に生える耳毛を剃ってもらえない現状を打破したい。
理容師業の所管官庁は厚生労働省だ。
関係者を直撃した。
「無理に耳孔内の毛を剃らなくても……。気持ち悪いですか? 理容師さんにお願いしてできる範囲でとしか。条例で禁止している自治体もございますし。
それ以上の回答は控えさせて頂きます」
理容師さんが扱うカミソリのように切れ味鋭い回答はついぞ得られなかった。
だが、厚生労働省の関係者はこう付け加える。
「私は耳の穴から飛び出た耳毛を家内に毛抜きで抜いてもらっています」
やはり耳の穴から生えてきた耳毛を剃ってもらうことは難しそう。
剃るのではなく、痛みに耐えて“抜く”しかないようだ。
(フリーランス・ライター・秋山謙一郎)
床屋(昭和の呼称)に行く理由は気持ちが良いから。
1が耳穴剃り。
あのシュルシュルとスクリューされる爽快感。
2が耳剃りの後の耳掻き。
母や家内がやる無遠慮なゴリゴリではなくあの、かそけき、遠慮がちな、弱く優しい耳掻きにうっとりと寝入ってしまうのであった。
3が、日本カミソリで丁寧に毛穴を往復して毛根まで掘り起こす髭剃りの爽快な音と感覚。
実は、この3つだけで料金を払った以上の甲斐があると思っている。
王侯貴族もかくやと思う様な待遇を受けるついでに髪を刈ってもら
ったのが昭和の床屋。
それらが、全部無くなってしまった平成の理容店なんぞQBで充分だナ。