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航空各社による年末年始の利用実績が、1月5日に出揃った。
全日本空輸(ANA/NH)と日本航空(JAL/JL、9201)は円安で海外発の需要が好調だった。
4回目の年越しを迎えたLCCも、ロードファクター(座席利用率、L/F)がおおむね8割以上と、利用が定着してきたようだ。
2012年3月、国内初のLCCとして就航したピーチ・アビエーション(APJ/MM)も、提供座席数の増加に比例して旅客数も伸び、国際線のL/Fは91.5%(1.9ポイント低下)、国内線も89.3%(2.0ポイント低下)と前年を下回りながらも、国内の航空会社ではトップレベルの実績を残した。
一方で拠点とする関西空港では、利用者の増加が著しい。
利用者が増えればチェックインに掛かる時間が、遅延など運航品質の低下に結びついてくる。
利用者のチェックイン時間を少しでも短くし、空港旅客係員が誘導などに費やす時間も削減できないか──。
こうした視点から昨年10月、ピーチは関空の国際線用チェックイン機5台を、外装が段ボール製の新型機に更新した。
稼働状況を見極め、12月には国内線用にも10台導入している。
「従来のチェックイン機は、2012年の就航前にバタバタしながら作りました。
愛着がないわけではないけれど、3年間で蓄積したノウハウを生かし、本気で作ったらどうなるか、やってみたかったんです」。
“段ボール製チェックイン機”の生みの親、ピーチの人事・イノベーション統括本部イノベーション統括部の前野純部長はこう話す。
いくらLCCとはいえ、そして外装とはいえ、なぜ段ボールを選んだのか。
前野部長に話を聞くと、 単なるコストダウンだけが理由ではなかった。
自称最速・自称最安・自称最軽量「最短5秒でチェックイン出来るので、自称最速。日本で作っているけど、恐らく自称最安。段ボール製で自称最軽量」。
前野部長は自信を持って、新型チェックイン機をこう紹介した。
チェックイン機は大手では通常、導入から7年から10年程度は使い続ける。
しかし、ピーチはわずか3年で更新することにした。
しかも外装は段ボール。大手のがっしりした機械とは対照的だ
これまで使っていたチェックイン機は、木製の棚にパソコンとバーコードリーダー、プリンターを組み合わせたもの。
大手と比べればあまりにもシンプルな外観だ。
社内でも当時、「これで本当に大丈夫なのかと言われました。
でも、搭乗してしまえば不要になる航空券にお金を掛けたくなかったです」と前野部長は言う。
実際、ピーチが編み出した“LCC仕様”のチェックイン機はその後、他の国内LCCも似たようなものを導入している。
従来のチェックイン機と比べて、もっと安く、軽く出来ないかと考えて開発された段ボール製チェックイン機。
最初はスポンジを考えたというが、「スポンジの値段が結構高くて、段ボールに落ち着きました」と前野部長は話す。
段ボール製チェックイン機は、地元の建築事務所との共同開発。
今後は成田や那覇など、ピーチが乗り入れる全空港のものを置き換えていく。
新型の特徴は段ボールだけではない。高さが70センチ高くなり、遠くからでも見つけやすくなっている。
画面も従来の15インチから32インチに拡大され、上下半分ずつ異なる情報を表示できるようにした。
パッと見で背が高く、安定性が気になるところだが、強度計算も行って検証済み。
従来のチェックイン機は、導入後に転倒防止板を背面に追加したので、今回はこうした反省点も開発時に盛り込んだ。
並んでいる人にも画面で案内
チェックイン機の背を高くした一番の目的は、乗客がターミナル内で見つけやすくするため。
従来のチェックイン機は背が低いため、乗客でごった返していると人混みに隠れて見つけづらかった。
このため、初めて利用する人がチェックイン機の奥にある有人カウンターまで来てしまい、係員が誘導することが頻発していたという。
そこで高さを増すだけではなく、上部にピーチのロゴが入れることで、遠くからでも見つけやすくした。
画面も大きくなったことで、表示画面の上半分には、「お並びの方は旅程表をご準備ください」など、並んでいる間に用意してもらうものや、注意点を表示できるようになった。