http://diamond.jp/articles/-/84170
前略
あなたの上司がもし「よい上司」ならば、あなたは非常に幸運だ。
上司は、あなたのモチベーションを上げ、困ったことがあったら相談に乗ってくれ、目指す方向を一緒になって考えてくれる。
すべての部下に公平に接し、えこひいきや陰口はしない。
つまりは、部下の能力とやる気を最大限に引き出すために、様々なサポートをしている。
だが、あなたの上司が「ダメ上司」だった場合、それはかなり不幸なことになる。
そして、残念ながらダメ上司の割合は日本では結構高いようだ。
筆者がこれまで聞いた例を紹介したい。
①一流のディ・モチベーター(モチベーションを下げる人)
上司の役割の最も重要なものの一つは、部下の「モチベーター」だ。部下と、仕事の意義、ゴール、ビジョンを共有し、目標に向かって一緒になってがんばっていく。
部下の頑張りや貢献をきちんと評価し、チャレンジを奨励する。
自分が評価されている、認知されていると思えば、やる気は出てくるものである。
そういった環境を作ってあげるのがモチベーターとしての上司の仕事だ。
しかし、それとは正反対の「ディ・モチベーター」の上司がいる。
部下のやることに建設的な批判ではなく、文句やいちゃもんばかりつける、特定のお気にいり部下をえこひいきする、できる見込みよりできない理由ばかり言う、責任を部下に押し付けて自分は逃げる。
そのくせ自分は部下よりも仕事ができない。
にもかかわらず、自分は仕事ができると思っている。
②指導しない
まだ仕事に不慣れな社員に、経験させる意味で、多少きつめの仕事を与える上司がいる。
そういった上司は「良い上司」か「ダメ上司」かのどちらかだ。
良い上司は、部下の能力を伸ばし、経験を将来に活かせるようなケアをし、フォローをする。
そして何より、部下が仮に失敗しても自分が責任をとる覚悟を持っている。
ダメ上司は、部下の仕事プロセスを見ないで結果のみを見る。
うまくいっているときはいいが、うまくいかないときは、その原因分析ではなく、叱責が先にくる。そして失敗をすべて部下のせいにする。
部下の能力を伸ばそうという考えは全くないくせに、方便として「お前にもいい経験になる」といったセリフを言う。
③無関心
部下のことを見ていない。
仕事ぶりについて何のフィードバックもしない。
自分の仕事はやるが、部下に手本を見せるでもない。
部下が仕事で困っていると、自分でやってしまう。
仕事は終わるが、仕事を通して部下を育てる気はない。
つまりは部下に無関心なのだ。
④アンフェア
部下や同僚、そして上司との関係を、損得勘定でばかり考える。
結果として、自分に媚びてくる部下をひいきしたり、上司に振り回されて、部下への指示がコロコロ変わる。
人間関係を損得で考えるので、付き合って得になる相手には親身になるが、そうなるかどうかわからない人には冷たい。
したがって、新入社員や役職のない一般社員には非常に厳しい。
これらの上司に共通する事項は「実力以上に威張りたい」という権力への欲望だ。
人間のあらゆる欲望の源泉はリビドー(原初的性欲)であると説いたのは、精神分析学の祖、ジークムント・フロイトだが、一方で、アルフレッド・アドラーは、「共同体感覚」と「力と優越への努力」のせめぎあいを鍵とする。
この2つは誰しも持っているものであるが、人によってどちらを重視するかが違う。
ダメ上司に共通するのは強すぎる「権力への意志」
本稿の文脈に照らし合わせて単純化していえば、前者は「部下とともに歩み発展していこうとする」ことであり、後者は「威張る、権力を持つことを目的とする」ことである。
後者の極端に強い人は、権力そのものが目的となるため、部下を振り回すこと、自分の言うことを聞かせることが主眼となり、その内容を省みない。
つまり自分が権力者であることを確認できれば満足なのだ。
一方、共同体感覚の優れた上司は、部下との調和、部下のキャリアアップという教育的な視点を持ちつつ、組織として高いパフォーマンスを出すことを第一とする。