http://jp.reuters.com/article/oil-future-opution-idJPKBN0UM0E220160108
[ロンドン 7日 ロイター] – ゴールドマン・サックスが昨年、原油価格が1バレル=20ドルを下回ると予想した際、そのシナリオが実現する可能性はかなり低いとみられていた。
先渡し5カ月物や市場の一部は、既にその予測が正しいことを証明している。
カナダの原油現物価格は今週、既に採掘や輸送コストより安い20ドルを下回る水準まで売られている。
一方でオプション市場のトレーダーたちは、25ドル割れに備えてプロテクションの購入に乗り出した。
市場に出回る原油の量が既に多すぎるとの懸念の高まりを反映した動きが、今や米国と中国の需要急減速というダブルパンチを受けている。
米国のシェール企業など高コストの生産者から市場シェアを奪おうと、サウジアラビアが石油輸出国機構(OPEC)による原油輸出の拡大を推し進めことを受けて、過去1年半に原油相場は3分の2落ち込んだ。
その主な原因として供給過剰がやり玉に挙げられていた。
その後は原油価格の下落が数年ぶりの高水準まで世界の需要拡大を促し、相場崩壊に陥る事態は回避され、2016年後半には相場が回復するとの期待が生産者の間に広がっていた。
ところが、サウジアラビアが当初の戦術の勝利を祝おうという矢先に、価格下落のために米国の生産が落ち込み、米国だけでなく中国や欧州の需要も予想以上に弱いとの兆候が出ている。
世界第2位の石油消費国であり、2000年代初頭のコモディティブーム以降に世界経済の成長エンジンでもあった中国の推計需要は、9月と11月にともに前年同月比でマイナスを記録した。
入手可能な統計によると、最大消費国である米国の需要は、10月以降に落ち込み始めた。
ガソリン価格は下落しているが、ディスティレート(留出油)は2015年末にかけて10年超ぶりの低水準まで落ち込んでいる。
欧州連合(EU)の需要は昨年の大半を通じて上向きのサプライズが続いたが、10月は横ばいとなっている。
ナティクシスのアナリスト、アビシェク・デシュパンデ氏は「2015年は目覚ましい需要の伸びとともにスタートした。
しかし、第4四半期に事態は変化したようだ」と話す。
<サポートラインは崩壊>
ゴールドマンの大胆なシナリオは、市場が採算に見合わない生産設備の閉鎖を加速させるために、市場は1バレル=20ドルの価格ショックを経験するとのロジックに基づいている。
それはもはや絵空事ではない。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは7日、「最近の原油は圧力の下にあり、20ドル割れの下向きリスクが高まっている」と指摘した。
人民元安と中国株式市場の取引停止でアジア市場が混乱に陥ったことを受けて、
この日の北海ブレントとWTI価格は一時的に2004年以来の安値となる32ドル近辺まで下落した。
原油価格が序盤に最大5%下落すると、通常はアジアの取引時間に相場が穏やかな動きを示すことはあまりなく、チャートの専門家も数十年ぶりの大混乱にどんなトレンド線を描けばよいか苦慮している。
PVMのロビン・ビーバー氏は「サポートラインが麻痺している。買い持ちでは勝てない。
最大の痛みを伴うのはもっと低い水準だ。ロング(買い持ち)は推奨できない」と話す。
ビーバー氏は、WTIが32.40ドルの支持線を下回ると20ドル台半ばまで下落を止める相場の節目は数多く存在しないと指摘した。
数分後にWTIは32.10ドルをつけ、その後にかろうじて34ドルまで値を戻した。