http://www.sankeibiz.jp/econome/news/151212/ecd1512121712002-n1.htm
法律改正により、希望者の65歳までの雇用が義務づけられたが、現実はそれほど甘くはない。
定年延長できる人と、引導を渡される人はどこが違うのか。
実績だけではない、意外なポイントが浮かび上がってきた。
定年後も希望者全員を再雇用します、と謳っているが、それは表向き。
再雇用後はきつい仕事をやらせて自主的に辞めるように仕向けるなど、会社にとって必要のない人間に対しては露骨な嫌がらせをして退職に追い込んでいるのが実態です。
昨年12月末に電子部品メーカーを62歳で退職したA氏はこう語る。
本当は65歳まで働きたかったのだが、同僚に対する会社の仕打ちに嫌気がさして辞めたという。
「定年後も残ってほしい社員は、他社に就職されては困る技術系の人などごくわずかしかいない。ほとんどの人はいらないんです」とA氏は言う。
希望者全員の65歳までの雇用を義務づけた改正高年齢者雇用安定法が2013年4月に施行された。
しかし、企業の本音は違う。
上場企業に業績評価など再雇用の対象者を絞る基準は必要かを聞いたところ、必要と答えた企業が48.6%、「本当は必要だと思うが、法の主旨から選別基準を設定するのは望ましくない」が47.1%。
合わせて95.7%の企業が選別したいと考えているのだ(図表1)。
サントリーホールディングスや大和ハウス工業のように定年を65歳まで延長した企業もあるが、大半の企業は定年後、1年ごとに契約更新する再雇用方式。
しかも給与は現役時代の半分というのが相場だ。
それでも人手不足の建設業や製造業のように定年後も残って働いてほしいという業界もあるが、ほとんどいらないという業種もある。
ソフトウエア開発会社の人事部長は、「正直言って60歳を過ぎても使える社員は少ない。
発想が古いうえに、技術の進歩が早いので追いつくのも大変。
できれば60歳前に3年分の退職加算金を払って辞めてもらったほうが助かる」と本音を漏らす。
使えない社員は60歳を前に退職勧奨される可能性も高く、再雇用されても冒頭のA氏のように自主退職に追い込まれるかもしれない。
法律で65歳雇用が義務化されても決して安心はできないのだ。
では定年後も会社に残ってほしいのはどういう人なのか。
元JCB執行役員で再雇用事情に詳しい 感性労働研究所代表の宮竹直子氏は「特殊なスキルの持ち主よりも知識や経験の伝承ができる人」と語る。
特殊なスキルや知識を持っていることが望ましいですが、その能力をフルに発揮してほしいというより、これまでに培った経験・技術を後輩に伝えることを会社は期待しています。
自分は黒衣に徹し、若手を前に出してやらせる。失敗させてもいいからアドバイスしながら後輩を育てていくタイプに残ってほしい、と会社は思うもの。
たとえば営業職であれば、会社にとってはその人がいなくなることで顧客や取引先がなくなることが一番怖い。
「取引先に若手を連れていき、人間関係の築き方を含めた自分のやり方を実践で教えながら受け継いでもらう。それができる人です」(宮竹氏)
逆に自分が培った専門性や経験に過剰な自信を持ち、後輩を仕切りたがる人もいる。
過去の成功体験を披瀝し、自慢話をする人がいるが、これが最も後輩に嫌われるタイプだ。
電機メーカーの人事部長は「自分の実力を知る」ことが大事だと指摘する。
過去の実績や自分の専門性を過信している人が多い。
会社の看板やブランド、優秀な上司や部下のサポート があって実績につながっていることを忘れているのです。
さも自分一人でやったかのような自慢話など誰も聞きたくありません。
自分の実績が本物か偽物かを検証し、自分の実力を知ること、そのうえでどんな役割を演じればいいのかを突き詰めて考えることです。
引用元: ・【雇用】定年後も残ってほしい社員は一握り? 「ほとんどの人はいらない」厳しい声
自分の役割とは何かを知る人の意識は、職場での立ち居振る舞いに表れる。
実例を挙げて宮竹氏はこう説明する。
部長職を務めて再雇用された人がいます。
基本的には定時に帰るのですが、若手が残業していると常に『お先に失礼します』と言って席を立つ。
会議にも参加しますが、決して自分から発言せず、意見を求められて初めて答えるのです。
そういう人ですから周りも『こういうものをつくってみましたが、見てもらえますか』『ここが行き詰まっているのですが、どうしたらよいですか』と言って寄ってくる。
その方は決して無理して自分を抑え込んでいるのではなく、後輩が自律的に育つことを支援するのが自分の役割だと言い聞かせているのです。
元部下の若手社員に「お先に失礼します」となかなか言えるものではない。
その人は契約更新のたびに継続して働いてほしいと懇願されたという。
定年延長すれば、元執行役員、部長、課長職の人であっても一兵卒として働くことになる。
「現役の延長線上で『おまえ、そんなやり方はダメだよ』と口うるさく言う人もいるし、俺が俺がというタイプだと若手が遠ざかってしまう」(宮竹氏)という弊害をまき散らす人も少なくない。
再雇用したくない人はプライドが高く、勤務態度が悪い人だ。
大手食品会社の人事課長はこんな事例を挙げる。
「途中席を立ってタバコを吸いに出かけたまま帰ってこない人、あるいは周りに行き先を告げないで席を立ってしまう人がいますが、上司としては部下の手前、示しがつきません。もっとひどいのは仕事のじゃまをする人。終業前の4時を過ぎると、バサバサ大きな音を立てて新聞を捲って読み始めるのです。なぜ、そんなことをやるかというと誰かが飲みに誘うのを待っているわけです。うるさくてしょうがないから、誰かが別の社員に『今日はおまえがつきあえ』と目配せして、結局、誰かが犠牲になってしまうことになる」
プライドが高い人ほど職場に疎まれて辞めざるをえなくなることが多い。
「年収が半分になり、決裁権限もなくなる。女性の一般職と同じような仕事をやらされ、なんで俺がこんな仕事をしなきゃいけないんだと愚痴を漏らす人がいます。割り切れない気持ちもわからないではないが、その結果、いいかげんな仕事しかしなくなり、自分で自分の価値を下げてしまう人がいます。周りの目も厳しくなり、最後はいづらくなって辞めてしまう人も」(宮竹氏)
40代が定年後もすんなりと再雇用される保証はない。
工作機械メーカーの人事部長はこう指摘する。
「課長の平均年齢は44歳ですが、同期で課長になれるのは半分もいません。社員の人口構成も48歳から50歳の層が最も多く、いずれ定年を迎えるとして、全員を再雇用するとしたら人件費が膨らむのは間違いありません。今、考えているのは40代半ばから50代半ばまでの層を対象にした退職加算金つきの転身支援プラン。これでできるだけ定年到達者を減らし、必要な人だけを再雇用する形にしていきたい」
同社に限らず40代後半の社員に向けたセカンドライフ支援セミナーの開催や
割り増し退職金つきの転身制度を設けている企業は多い。
バブル入社組の人件費圧力は企業に重くのしかかっており、給与制度の改革に踏み切る企業も出てくるだろう。
国の強制で65歳まで会社が面倒をみてくれると思っているとしたら甘い。
40代の今からこれまで培った自分の専門性や経験を一度棚卸しして、今の会社で何ができるのか、自分の役割を知ることが重要だ。
実家の会社では溶接工の人が定年後も結構長く働いていた。
仕事以外にやる事ないから働かせてくれって言ってきて日給の形で継続。
腕は良かったし真面目だったから重宝されていた。